紅茶教室をやろう。
そう決める少し前から、私は紅茶のことをもっと知りたくて仕方がなくなっていました。
紅茶教室に通うだけでは足りなくて、
とにかく、本を読みました。
一冊読んだら、また次の一冊。
紅茶の淹れ方。
茶葉のこと。
イギリスのティータイム。
紅茶の歴史や文化。
知れば知るほど、
もっと知りたい。
本屋さんや図書館で紅茶の本を見つけては、
貪るように読み漁っていました。
それまで知らなかった世界が、本を開くたびにどんどん広がっていく。
それが、おもしろくて仕方なかったのです。
そして、その中に、
何冊も手に取るようになった、ひとりの著者さんがいました。
その方の本を読みながら、
「もっと知りたい」
「この世界を、ちゃんと学んでみたい」
という思いは、ますます膨らんでいきました。
その頃の私はまだ知りませんでしたが、
その著者さんが、のちに私の紅茶の師匠になります。
そんな頃。
紅茶教室をやろうと決めた私に、
またしても夫が言いました。
「教室をやるなら、やっぱりロンドンに行ってきたら?」
え?
ロンドン!?
当時の私は、ひとりで家を空けて海外へ行くなんて、考えたこともありませんでした。
「えー! 無理だよ〜」
「家を空けるなんて考えられない〜」
そんなことを言っていたはずなのに。
ふと、
「あの先生から、直接学べるかもしれない」
と思いました。
そう思ったら――
話が変わってきます(笑)。
調べて、連絡をして。
気づけば私は、
本の中で読んでいた先生に会うために、
ロンドンへ行くことを決めていました。
自分でも、あまりの展開の速さにびっくりです。
でもきっと、それくらい紅茶がおもしろくて、
もっと知りたくて仕方がなかったんだと思います。
ロンドンでは、その先生のもとで紅茶を学びました。
ずっと本の中で読んでいた世界を、
今度は目の前で見て、聞いて、味わっていく。
もちろん、レッスンだけではありません。
街を歩けば、紅茶のお店がある。
デパートへ行っても、紅茶。
ティールームへ行けば、
日本で本や写真を見ながら憧れていた世界が、目の前にある。
フォートナム&メイソン。
紅茶専門店。
アフタヌーンティー。
スーパーに並ぶ、日常のティーバッグまで。
見るもの、飲むもの、
何もかもがおもしろい。
「紅茶って、飲み物だけじゃないんだ」
暮らしの中にあって、
人が集まるところにあって、
その土地の文化と一緒にある。
日本で紅茶を習い、本を読み漁っていた私にとって、
ロンドンで過ごす時間は、知らなかった世界の中にそのまま飛び込んだような感覚でした。
そして日本へ帰ってきた私は、
すぐに紅茶教室を始めました。
「もう少し準備してから」
とは、あまり思わなかったみたいです(笑)。
学んできたことを話したい。
ロンドンで見てきたことを伝えたい。
何より、紅茶のおもしろさを誰かと一緒に楽しみたい。
その気持ちのほうが大きかったのだと思います。
ところが。
一度ロンドンへ行ったら、
ますます行きたくなってしまいました。
今度はどうしても、
クリスマスのロンドンへ行きたい。
そして、先生のクリスマスレッスンを受けたい。
そう思った私は、
それほど間を空けずに、もう一度ロンドンへ。
クリスマスの季節のロンドンは、
街そのものが特別でした。
きらめくイルミネーション。
クリスマスのディスプレイ。
そして、いつもの紅茶の時間も、
どこか華やいで見える。
先生からクリスマスのティータイムを学び、
たくさん見て、感じて、吸収して。
日本へ帰ってきたら――
すぐにクリスマスレッスンを開催しました^^
今思うと、
習う → やる。
見てくる → やる。
ものすごくシンプル(笑)。
でも当時の私は、
「もっと勉強してから」
「ちゃんとできるようになってから」
とは、あまり考えていなかったのかもしれません。
だって、おもしろかったから。
知ったことを、すぐ誰かに話したかった。
自分が感じたワクワクを、
そのまま誰かと分かち合いたかった。
そして紅茶教室には、
少しずつ人が集まるようになりました。
やがて、
予約の取れない教室
と言っていただけるようになっていきました。
でも、私がいちばんうれしかったのは、
予約が埋まることそのものではなかった気がします。
テーブルを囲んで、
「おいしいね」
「へえ、知らなかった!」
「これ、家でもやってみたい」
そんな声が飛び交うこと。
そして、私が大好きな紅茶の話をすると、
みんなが楽しそうに聞いてくれること。
第1話で書いた、
「人とつながれる場所をつくりたい」
という願い。
気づけばそれは、
ドッグカフェではなく、
一杯の紅茶を囲む場所
として、ちゃんと形になり始めていました。
そして、この頃の私はまだ知りません。
大好きになった紅茶のとなりに、
もうひとつのお茶の世界が加わることを。
それが、
ハーブティーでした。












